【同じということに注意】 グローバルシステムを構築していると、部分的にグローバルな汎用パッケージソフトウエアを利用することは少なくない。そこで注意が必要なのは、同じということの意味である。汎用システムを提供しているサプライヤーはどこまでが同じで、どこが異なるかの詳細は公表していないことがほとんどである。むしろ、異なるところの詳細は分かっていないのではないかと思われることが多い。 この問題は、海外で開発されたシステムを日本でも採用する場合と、日本で開発したシステムを海外で利用する場合のどちらにも当てはまる。アプリケーションはそれが稼動するオペレーティングシステム(OS)の上で稼動するが、グローバルシステムにおいては、OSが地域、言語、によってわずかづつ異なることがあり、それらがアプリケーションの挙動に影響することがある。現在のシステム稼働環境では、何らかの管理・監視用のミドルウエアが利用されており、それらが影響することもある。 最も問題の多いのは、アプリケーションの言語の異なるバージョン間の相違である。特に、日本語とアルファベット系のシステム間の変換は、同一といわれていても処理結果の異なることも少なくない。システムの情報技術的内容だけでなく習慣的な相違などもある。 さらに、システムのバージョンアップにより機能の変更が加えられることは多く、これらの相違により同一のシステムとして機能しないことが多々ある。単純なものでは、パソコン上で動く非常に一般的なオフィス系のシステムでもバージョンアップでの互換性が保たれていないことはたびたび起こっている。このようなシステムを補 |
助的に使っていたりすると、グローバルに整合性を取ることがなかなか困難である。グローバルな各拠点で、すべてのバージョンをあわせることは非常に難しい。 互換性の問題は、CAD系のシステムでどうしても整合性が取れずついに利用を断念したことがある。国によって、利用可能なバージョンのフェーズが合わず、図面が部分的にとんでもない形状を示したりする。問題点を突き止めてやっと修正すると、他の地域で新たなバージョン移行してしまい、また別の問題が発生する。新バージョンへの移行と修正のイタチごっこでついに利用をあきらめた。 単位の変換も注意が必要である。変換誤差の蓄積で部分と合計とが合わないことがあるので、厳密な判断ロジックが入っているシステムでは、問題がループしてしまったりすることがある。技術系の場合には、図形が歪んだり、閉領域にならなかったり、数値解析の収斂判定ができなかったりすることがある。近似公式の相違により誤差が蓄積することもある。これらはプログラム上のロジックを調べても原因が見つからないので厄介である。 内容は少し異なるが、地域によって言葉の定義が異なる場合はよくあり、異なる意味を知らずに利用していることも少なくない。これはシステム上の問題ではなく、制度・文化の問題であり、言葉の定義の辞書を作り相互に間違いのないことを確認すべきであろう。 |