【本当に理解をしていることの確認】

相手に説明したことが理解されていると思っていたらとんでもない誤解をしていたということは、業務上によくある。それが、グローバルな環境では、文化の違いや制度の違いに起因して理解の困難さが倍増する。また、こちらも相手のニーズを理解しているようで、自分が理解していないことも同様に良くあることである。

その初期的な誤りは、言葉の定義である。これは、企業による用語の意味の違いばかりでなく、同じ企業内でも地域によって異なることは珍しくない。同じ日本語でも「入荷」と「入庫」、「発送高」と「売上高」など紛らわしく、「原価」などはその定義がまちまちである。定義の辞書を共有することが重要だが、確認のために実データを並べてみて、整合性を確認することが一度は必要である。

実績データの集計では、後刻訂正も可能であるが、モノの流れでは取り返しのつかない事態になる。単に言葉の定義の問題だけではなく、それぞれの常識が異なっていることがあり、思い込みも多い。「納期」なのか「出荷」なのかを間違える。発送したというが、入荷していない。調べてみると、船に載っていて、到着まであと2週間かかる。納期に間に合わない。これらは、システム上の誤りもあるが、運用上の不一致が多い。

このような日々の管理の問題は、運用を始めて間もなく気がつくが、基本的な契約上の誤解がある場合はとんでもない問題になる。大型設備の受注で「不燃性」という仕様があった。納め先の国の規定は製造者の国の常識的定義より厳しいものであった



が、その違いに気づかず、製造側の一般仕様で納入した。ところが、現地の受け入れ検査で不合格となり、膨大な費用と時間をかけて再製作して納入した。さらに、その期間は納期遅延となり、そのペナルティーも莫大な額になった。

類似の問題であるが、大型プラントを納めたところ、最後の性能試験でわずかな性能不足が認められた。一般には、不足分の違約補償で済むが、その契約では完全な性能を求めていた。性能向上の種々の改造を施したが満足せず、部分補償交渉も成立せず、結局は設備の再製作の上、再納入した。顧客は海外の政府機関の運営部門であり、厳格な契約履行にこだわったことも解決を難しくした。これも膨大な出費と時間を費やし、他のプロジェクトへの影響も大きく、その事業の欠損を埋めるのに数年を要した。

これらの例は、規模の大小はあれ、よくある問題であり、着手時の相互の意思疎通、確認、に問題があったことと、そのチェック機能が働かなかったことにある。経営情報システムの直接の誤りの問題ではないが、この種問題は今後そのバリエーションを考えても少なくない。

上記のようなプラント設備ではなく、量産品におけるリコール問題があり、その不具合情報の公開時期をめぐり多々社会問題になっているが、製品の納入後のトレースとその情報分析は情報技術の高度化により容易になっている。むしろ、それをどう運用していくか、適切な判断が人為的問題として要求されている。



 
  レポート第1弾  「グローバルシステムの開発と運営における諸問題
                         −事例にみる諸問題とその解決のヒント−」



  連載第13回   理解されているようで、されていない、こちらも理解していない

            
 システム開発   ・相互の理解はあくまでも十分に
              ・思い違いの後戻りを防ぐ
              ・思い込みをやめよう




























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