【国境を越えるときの注意】

企業運営のグローバル化が進んでいるが、モノ、カネ、情報、などが国境を越える時点で注意するべきことが多い。ネットワークはグローバルに繋がっているので日常の情報のやり取りには無意識でいることが多いが、知らない間に相手に権利が移っていたなどということのないように意識を持っていることが必要である。

国境を越えた製品や設備の移動に関しては、資産の移動としてだれもが常識的に必要な納税や移転制限の規則に従っていると思われるが、目に見えにくいシステム、ソフトウエア、サービス、権利等の移動に関する取り扱いに注意が必要である。

システムのグローバル化と標準化が進むとどこかがサービスを提供し、どこかがそれを享受することになる。システム開発やその利用、運営に関しても同じである。一方で、グローバルな各拠点はそれぞれの地域の法人であることが基本であり、その地域の法律や規則にのっとって運営されていることが原則である。

よく問題になるのは、親会社から地域の会社に製品を売り渡す時の価格設定が適切でない、利益の発生場所を故意に操作したなどのいわゆる移転価格問題がある。地域の会社に製造委託をしている場合はこの逆の同様な問題がある。地域の企業は適切な利益をあげて地域に適切な納税をすることが基本にある。


同様な事がシステム開発や利用サービスや運営に関しても発生する。開発時のコスト負担、その後の使用料金の負担額などが適切でないと製品の価格移転と同じ問題として課税されることがある。租税条約が締結されている地域相互の場合には、いわゆる二重課税は調整されるが、条約が締結されていない地域では解決できないことがある。これらの問題は地域によって異なるので、個々の問題に関して法務部門など専門家と協議のうえ対応するべきである。

一方、これらのシステムや利用、サービスを無償提供すると、無償供与としての立場から問題が指摘されることがある。ソフトウエアは資産として減価償却の対象となるので、システム開発や購入の当事者と利用者が異なる場合には、その費用負担の方法について専門家と協議のうえ決定し後刻トラブルの無いようにしておくべきである。

製品や設備の場合には、独立企業間の適切な価格の算定は比較的容易であるが、システムやソフトウエア、サービスなどに関してはその決定根拠の説明が難しい。

ソフトウエアやサービスと同様、システムに含まれる知的所有権に関しても同様な権利の移転価格などの問題の対象となるが、妥当な価格の算定が難しく指摘を受けた時に明確な説明ができる根拠を定めておくことが大切である。



 
  レポート第1弾  「グローバルシステムの開発と運営における諸問題
                         −事例にみる諸問題とその解決のヒント−」



  連載第20回           国境を越えるときの注意

            
  価値の移動   ・国境を越えると権利が異なる
             ・適切な価値の評価と移転価格


























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