【システムエンジニアの評価】 わが国でも最近は従業員の評価制度が取り込まれ、人事評価や処遇に利用されつつあるが、グローバルな世界における人材の評価は、もっと真剣なものであることを認識していないと海外現地におけるよい人材の確保と適切な人間関係を維持することが困難である。このことは、グローバルなシステム開発における技術的問題以上に重要かもしれない。特に慢性的に不足している優秀なシステムエンジニアや、実務レベルの管理者は、組織間を渡り歩くことも多く、採用先でそれをキャリアパスとして積み上げていく。本当の評価のためには、こちらもそれなりの経験とノウハウが必要である。 情報システム部門のマネジャーを日本から送り込んだ人材にするのか、現地人材を起用するのかは組織全体の構築に関する課題である。大切なのは、どのレベルのマネジメントから現地責任者に委ねるにしても、その業務内容がブラックボックスにならないようにすることである。十分に信頼のおける人材であれば、思い切って権限を移譲することは可能である。 もう一つの選択肢は、外部資源の活用であり、どこまでを内部でやり、どこからを外部に任せるかという選択である。内部によい人材が得られなければ、外部へ委託することは効果がある。その場合に、外部とのインターフェースマネジメントができる人材が内部にいなけれならない。どこで線を引くかにより、内部の責任者の機能が異なってくる。極端な場合は、戦略・企画までを内部で実施し、それ以外の下流はすべて外部に委託することもあり得る。 |
システムエンジニアレベルの内部人材の評価は基準を明確にしてはっきりと言わなければならない。通常、個人対個人の対話であり、計画と実績、期待と現状、の乖離の認識議論になる。明確な評価基準を示し、評価の結果を明示することが必要である。実務レベルのマネジャーの評価も同様である。 内部で育ててきた技術者は比較的定着するものであるが、与える評価とそれに伴う職位と将来への期待によりさらに長期的に定着するかは決まってくる。彼らは常に自分の同僚との比較で見ており、友人との比較で判断することが多い。こちらで将来上級のマネジメントまで任せようとする人材ならばそれなりの評価と期待をもつような待遇を与えることが必要である。このレベルになると、日常の仕事の中での信頼感ある任せ方が必要である。いつまでも、日本人が当該部門のトップに居座っていたのでは彼らは見切りをつけて出て行くことが多い。また、自分の職位を守るために、ノウハウを自分の内部にため込んで開示しないことがある。 アジア系では職位を求める傾向があり、米国ではスペシャリストとしてのプライドを持って評価を求めてくる人たちが多いと感じるが、これは人材市場の構造からくるものではないかと思われる。 内部で育って独立し、良いパートナーとして外部から支援してくれる人材も少なくない一方、一過的な職場として、キャリアアップのみを目的として動いている人材もあるが、これは経歴を見ればある程度想像がつくので、採用時にはそれを承知の上で利用し、不合理な交渉には応じないことが賢明である。 |